インタビュー:株式会社 日立製作所 様

投稿者の感情までも解析・可視化するサービスを実現

インタビューイメージ
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制御・運用技術(OT)、情報技術(IT)、プロダクトを結びつけ、新たな価値の創造と社会課題の解決に挑み続ける日立製作所。
ILUテキストマイニングを駆使し、SNSの投稿やコールセンターの会話記録などから企業や商品に対するエンドユーザーの声や感情を解析して可視化する「感性分析サービス」を提供しています。
同サービスのプロジェクトについて西脇康人さん、亀田梓一さん、松下直樹さん、日下照英さんにお伺いしました。
※2020年11月24日(火)にインタビューを実施

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社内用に開発したシステムを外部向けサービスとして提供

インタビュー風景1 インタビュー風景1

――「感性分析サービス」をリリースするまでの経緯を教えてください。

西脇さん(以下、敬称略) 当社のお客様が、個人のブログやSNSなどの“生の声”を分析し、自社の製品やサービスの改善、あるいはリスク対策などに活かす目的で、インターネット上の膨大なデータから価値ある情報を抽出するシステムの開発に着手されたことがプロジェクトの発端でした。
当社は「個人のブログやSNSなどのテキスト情報を蓄積する」部分と「蓄積したデータ・テキストマイニングされたデータを可視化する」部分の、大きく2点を担当しました。
その中の「蓄積したデータのマイニング部分」をILUさんにご協力いただきました。

松下 それが2017年の夏頃です。日立はPoC(Proof of Concept:概念実証)実施後から参画しました。本番化に向けては、テキストデータが増えたことに起因する性能の問題や実運用に向けた課題などもあり、実質的にはその時点から全体を作り直した感じです。

西脇 完成したシステムについては、お客様よりご評価頂き、「今後もユースケースが増え、新たな使い方などが見えてくることを期待している」というお言葉をいただきました。
日立としても、幅広い業界に適用できるように汎用化したうえで2018年10月に「感性分析サービス」としてリリースさせていただきました。

――ILUにはどのような印象をお持ちになりましたか。

松下 私自身、テキストマイニングは初めて触れる技術でしたが、ILUさんはかなり豊富なノウハウをお持ちでいろいろ教えていただきました。テキストの活用の道はあると考えてはいましたが、テキストマイニングの手法もいろいろとあり、実際に何をどう使えばよいかは難しい領域でした。
テキストマイニングを感性という観点で掘り下げられることにまず驚きました。
ILUさんには技術的な部分だけでなく「使う側から見たらこういう形で提供するのがベター」といった活用方法のアドバイスまでいただき様々な面でご支援いただきました。

西脇 ビジネス観点や技術的観点で何度もご相談させていただいておりますが、多くのケースにおいて、ファーストコンタクトから1時間以内にご返答いただけています。
もし、時間がかかりそうなら返答の目安を伝えて頂けるため、当社側もスケジュールが立てやすく、大変助かっております。

亀田 ILUさん自体のレスポンスもそうですが、製品の性能も同様で、大量データを扱うバッチ処理システム、リアルタイム性が求められるオンライン処理システム、両方のシステムに適用可能なのが特長です。

松下 サービス化に向けて、ILUさんのご担当者に当社までお越しいただき、丸1日かけて勉強会を開催いただきました。そこで、テキストマイニングについて学び、抽出したデータから感性がどのようにテキストに付与されていくか、というイメージがつかめました。そうしたご支援もいただいています。
また、SNSには膨大な投稿が寄せられますが、それらをすべて解析するのは困難なので、前段の部分で「こういうものは排除する」というアイデアもいろいろいただきました。
もちろんILUさんのエンジンは高速ですが、入力するデータが膨大では速度に影響します。マイニングの時間を短縮するために、できるだけ意味のあるデータに絞り込むのは大切で、サービス化にあたってそれを実現できたのは大きかったです。

西脇 自然言語処理における解析の精度も高く、SNS特有の口語表記もきちんと意味を理解し、文章全体から「感性としてはこれ」と明確に示してくれます。

西脇 ILUさんの感性分類エンジンは81分類・420億パターンで、感性以外にも地域256分類、話題980分類ほか様々なエンジンが用意されているので、当社のサービスはそれらからお客様のご要望に合ったものを柔軟に選択して構成しています。通常のAIであれば学習させていくことが必要ですが、ILUさんの場合はその基盤となる辞書がしっかりしており、すぐ実戦で使えるというメリットもあります。

インタビュー風景2
インタビュー風景2

-- Chapter02

頻繁な辞書アップデートで解析の精度を維持

――サービスリリース後のメンテナンスはどのように行われていますか。

西脇 月1回、ILUさんが辞書をアップデートされています。新しい言葉は継続的に生まれるので辞書のメンテナンスは大変だと思います。「我々もサポートできるものでしょうか?」とILUさんにお話したことがありますが、「さすがに難しいと思います」とコメントいただきました(笑)。
長年の蓄積があるから成せる職人技と改めて認識しました。

日下 ある案件でお客様から「おかしな解析結果があった」という連絡がありました。「親指姫」に関するキーワードがサボテンに割り当てられるというのです。調べたところ日本語で「親指姫」という学名のサボテンがあり、それをヒットしてしまっていました。
ILUさんにお伝えしたところ、すぐ辞書に取り込んでいただき無事解決しました。

松下 プロジェクトでも一般名詞に近い名称をキーワードにしたら想定外の結果が出たことがあります。
そこで我々が辞書を変更したらますます状況は悪化していた可能性がありますが、ILUさんの豊富な経験で対処していただいたので事なきを得たとも言えます。

日下 機械学習には特有のロジックがあって、「人間がやればこうはならないだろう」という結果がたまに出るのかもしれません。
そうした事態が起こってもILUさんが迅速かつ的確に対応してくださるので助かっています。

-- Chapter03

感情の読み取りの次なるステップは会話の要約

インタビュー風景1 インタビュー風景1

――今後どのようにサービスを刷新していく予定ですか。

西脇 ソーシャルリスニングで始まったプロジェクトですが、テキストデータをインプットにそこから感性を解析できるエンジンを活用することで、多様な業務に適用できると考えております。
例えば、働き方改革のために社内メールを、サービス向上のためにコールセンターの対話を、あるいは会議の質の向上のために参加者の発言を、必要なものはテキストに変換すれば解析可能です。これらのユースケースの一部はすでに当社のサービスに取り込んでいます。

西脇 今後は、AIを活用したチャットボットとエンジンを組み合わせることで更にユースケースが拡がりそうです。

――その中でILUにどのようなことを期待しますか。

西脇 テキストマイニングによる単語の抽出・解析の次に着手したいのは、文章の要約です。
コールセンターに電話をかけて2時間話し続ける方もいらっしゃいますが、本当に伝えたいことは何なのかを簡潔にまとめることは大切です。単語から感情や分野を読み取り、クレームなのか好意的な内容なのかを判断することからもう一歩進めて、「何を話したか」までわかるところを実現できればと考えています。

亀田 言語の特性上難しいと思いますが、日本語以外の言語、例えば英語や中国語などにも対応できるエンジンを今後開発していただければ、さらにサービスの幅が広がります。

西脇 会話の要約やチャットボットの件は、新技術の共有という形ですでにILUさんからお声を掛けていただいており、不定期ですが月1回くらいの頻度でWEBミーティングを行っています。今後もそうした連携をぜひお願いしたいと思います。

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